計画を進めていたマンション住戸の全面改修プロジェクトの工事が始まりました。



写真は、図面で描いた壁のラインを、


実際の現場の床面に落としこむ作業(墨出し)が、


大工さん(右)と現場監督(左)によって行われているシーンです。


始点と終点の2点で張った墨付きの糸の中央を引っ張って、


それを離すと、糸の墨が床面に付くという仕組みで、とても重要な作業。


これがズレていると、


ここまで検討して、描いてきた図面が全く意味をなさなくなってしまいます。



墨出しから戻ること1週間。


現場では1週間かけて住戸全体を解体する作業が行われました。



コンクリートのブロックや、畳、天井や床を作るための下地材料、


もともとの排水管や電気の配線、エアコン機器、


などを撤去して、再利用したり、廃棄するものは産業廃棄物として処理します。




そうやって、あらわになった現場を改めて測定して、


あらわになる前に測定した寸法との誤差を確認しながら、図面を微調整。



今回の計画は、


面積が限られていることもあり、


かなりシビアな寸法調整をしていて、


数ミリ間違えると、


ドラム式の洗濯機を置けなくなったり、


ベッドがうまく収まらなかったり、


キッチンを使っていると狭いな~と感じられたり、


お風呂にバスタブがうまく設置できなかったり、


トイレで体を反転させるときが窮屈に感じられたり、


する可能性があるので、細かく事前協議をしながら進んでいます。








↑今回選定されたキッチン回りのモザイクタイル。



仕上材料を決めていくにあたっては、


カタログを見たり、サンプルを取り寄せたりと、


わざわざショールームに足を運ばずとも出来る事があるものの、


最終的には、ショールームを予約して、実物を確認しないと


なかなか決める事が出来ません。



とりわけタイルに関しては、


30㎝×30㎝とか60㎝×60㎝の現物が大きいのでサンプルが取りにくいのもありますが、


実際に見たときの質感を伴った感じ方が、


ウェブカタログや写真で見たときの印象とほぼ間違いなく乖離があり、


カタログで見て目星をつけていたものより、


ショールームに行って、目に留まったものの方が良い。ということが頻繁にあります。



↑今回選定した床タイル。触りたくなる質感。ベージュの目地とのバランス。



さらにタイルだけを見た時と、


タイルとタイルの間に見えてくる目地を含めて見た時の印象が全然違うので、


目地を含めたタイル数枚を施工した状態を確認できるショールームで確認しないと


ほぼ出来上がった時に、おかしいな。これじゃない。ということになりかねません。



↑塗装材料メーカーさんによるオイルステイン塗料の実演



次に検討を重ねているのは木板。


木板は、全国各地の加工業者さんからサンプルをいただき、


選定した実物の木板に施す塗料の実験中。



この木材への塗装も、だいたいの確率でカタログの塗装色と


実物に木材に塗られた際の印象が違ってきます。



経験値によってある程度の予想が立つ部分もありますが、


樹種によって塗装の乗り具合も違えば、色味も違ってくるので、難しいところ。


そういった作業を進めながら、


それらの仕上材料が集まった時に、どういった空間になるのか。


という全体コーディネートのような検討作業を、


大きな模型を作って、


そこに仕上材料の素材感を表現して、


それを覗き込みながら、確認。




それを実施図面にまとめていくことで、


建築図面の1つ。仕上表が出来上がっていきます。











① 玄関から見る

② 和室

③ DK



都内の中古分譲マンションの一室(約50m2)を、


全面改修するプロジェクトが始まりました。




通常、こういった中古マンションは、


売り手である不動産屋さんから依頼を受けた内装工事屋さんによって、



クロスの張替え


古くなった畳をフローリングに変更


キッチンやお風呂・便器の取り換え


空調機器やガス給湯器の取り換え


窓ガラスのクリーニング


などの工事が行われた後に


リフォーム完了物件として販売される。


という形が取られています。





見た目にはキレイになった状態のものが販売されているわけですが、



根本的な骨組や間取りといった部分に関しては、


当時(40年以上前)計画されたものが、


一部の間仕切壁を取り払ってリビングを広くした。くらいの更新で、


基本的には40年以上前に、当時の生活を前提に考案されたものが踏襲されているのが通常です。




言い換えれば、


一昔前の、みんなが同じ方向に幸せな生活を見ていた時代に考案されたプランを踏襲して、


そこになるだけ安く、「楽に」売れる状態をつくって、販売する


というビジネスが無限ループされている状況。




中古マンションを、


土地を買うように、買い手が購入して、


それを買い手が自由に改装したり、


建築家に間取り変更やインテリア全体の設計監理を依頼したり


する可能性はいくらでもあると思いますし、



そうすることで、より多様な住まいの形と価値が広がって


マンション内に新陳代謝が起こり、


ひいては、それが地域社会での価値の多様さの浸透につながっていく


にも関わらず、なかなかそうなりません。



多様であることは、


これからの私たちにとってのテーマだと思いますし、


多様性に溢れた社会はとても豊かなものだと思うのですが、


ビジネスと慣習が関わってくる現場では、多様さは厄介者扱い。


そんな状況にやり切れなさを感じていました。




そんな状況が少しずつ変わり始めたのか、


今回のクライアント(不動産屋さん)は、


全面的にプランニングを見直す提案をすること、


少々費用は増えても、実際にそこに住む感覚を大切にした材料を選定すること、


自宅で過ごす事が見直されているウィズコロナの時代における生活をイメージすること


を求めていました。



私たちも共感するところが多く、


感じていた問題意識を考える機会になるプロジェクトとなっています。